2008年07月05日

この上ない幸せ感気分になれる映画、ジュノ

ジュノ
ジェイソン・ライトマン
08.0704JUNO.jpg★★★★☆

 久々に映画で感動できた。終盤にかけて画面から発散されるポジティブパワー、高揚感はかつて味わったことのない位のエネルギーに満ちあふれてる。全米で大成功を収めたこの映画の影響でUSでは高校生の妊娠が急増の"ジュノ効果"なる副産物を生んだというが、この映画の幸せ感覚からしてうなずける話。
 少女妊娠で話題の映画『ジュノ』。なんといっても「付け腹」で好演した主演、エレン・ペイジ(ex.『ハードキャンディ』)の才気煥発な挙動がストーリーをぐいぐいと引っぱっていくのだが、その裏にはアカデミー受賞の脚本の力があったと。ディアブロ・コーディなる脚本家は今作がデビューで、ストリッパーの過去もある豪快なキャリアもつ29歳の新鋭。彼女のブログをみたプロデューサーが抜擢したという。スピルバーグとの次回作も発進していると。
 後は映画のポップなルックスとして監督の力も並でなし。ジェイソン・ライトマン監督は『ゴーストバスターズ』などコメディ映画の担ったアイバン・ライトマンの息子で、既に『サンキュー・スモーキング』なる映画で成功を収めてる30歳、俳優出身。

 バンド仲間と興味本位のセックスで1発妊娠の女子高生ジュノは、即中絶を決めるも、中絶反対のプラカード掲げる同級生に「赤ちゃんにはもう爪が生えている」と言われ急転、出産を選択。友人と里親探しを始め理想のカップルが即決。親にも告白し、親を交えての里親カップルとの面談も済ませ、時は出産間近となるが‥

 とにかく意外性のあるストーリーの展開力がすざまじい。
 後はこの映画、音楽に満ちあふれていて、そこも琴線に触れるポイントなのだが、ソニックユースあり、モットザフープルありのなにげにサブカルチックなセレクトがすばらし

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2008年06月28日

インディ最新作のスーパーエンターテイメント

インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国
スティーブン・ スピルバーグ
08.0627_Indiana.jpg★★★☆☆

 1957年、米ソ冷戦期を背景にクリスタルスカル(水晶ドクロ)をめぐる大活劇。あらん限りのスーパーな特撮技術駆使して映画の隅から隅までど迫力の追っかけシーンが展開される。そのスケールたるや半端ないど迫力のエンターテイメントである。ありえない設定が続出の馬鹿馬鹿しさはここまで徹底されると不思議と違和感が感じなくなる。実写とCGのシームレスな合成技術。世界最高レベル、ILMのなせる技。
ラストのオチのつけ方はさすがにスピルバーグならではの永遠の少年ぶりが出て苦笑となるが、まさしく期待通りのスーパーな出来栄えではなかろうか

 『インディ・ジョーンズ』シリーズ、19年ぶりの新作で第4弾。第3弾「最後の聖戦」の劇中の設定から実際に19年後の状況とし57年が舞台。冷戦期ということでソ連KGBとアメリカCIAの諜報合戦を忍ばせてる。
KGBの幹部、スパルコ(ケイト・ブランシェット)が考古学者インディ・ジョーンズ (ハリソン・フォード)を捕らえ神秘のパワーを放つクリスタルスカル捜索を強要するところから始まる物語。彼らから脱出し、今度は自らの手でそのスカルを探す旅路に。旅のお共は末に自分の息子とわかる青年マットと、シリーズ1「失われたアーク」でパートナーだったマリオン。スパルコ率いるソ連軍との闘争を繰り返しつつ、アマゾンのジャングル、メキシコの砂漠、イグアスの巨瀑を経て、目的のクリスタルスカルに肉薄するが‥

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2008年06月20日

リアルなパリが露出のラブコメディ

パリ、恋人たちの2日間
ジュリー・デルピー
08.0619_2Days.jpg★★★☆☆

 フランス女とアメリカ男のカップルが女の方の故郷パリで過ごした2日間をちょいとピリ辛に描いたラブコメディ。
排他的で享楽主義のパリの人々を赤裸々に描いておおよそリアルなパリが露出、という意味では画期的な作品。脚本・監督はゴダールやカラックスの映画でおなじみの仏女優、ジュリー・デルピーが担い、主演とプロデューサーをも兼ねる関与ぶり。ニューヨーク大学に映画専攻で学んでいるとは聞いていたが、意外にも軽妙なセンスあるコメディでのメジャー映画監督デビューである。
 映画ではほぼ本人出ずっぱりで会話劇が進行。アメリカ在住15年だけあって英語は全くフランス語なまりがない。劇中、英語しか話せない彼氏と、彼女の家族・友人との間に入って通訳にまわるジュリー演じるマリオン。アメリカ人でユダヤ系の彼氏ジャックは数々のギャップに悩まされるのだが、こと恋愛感覚に関してはマリオンに過去に関わりのある男続出で、しかもそんな男とたちとも友達として大切にしたいというマリオンに徐々に愛想つかし気味となる。
 小粋でおしゃれで毒っ気たっぷりのパリ恋愛模様

 マリオンの両親役にはジュリーの実の両親が出演してると
 監督ジュリーは次回作『The Countess』も撮り追えただ今ポスプロ段階と。16世紀に実在の美に取りつかれた女性の執念を描いたシリアスなモノらしい

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2008年05月08日

ドキュンメンタリーの真骨頂

靖国 YASUKUNI
李纓(リ・イン)
08.0507yasukuni.jpg★★★☆☆

 上映中止騒動などで物議かもす映画『靖国』を渋谷のアミューズで見る。劇場内警備員付き、建物の外では装甲車付きで警官が警備する物々しさ
 決して観後感のいいものではないので人に勧められたものじゃない。後味は悪いが、映画自体の仕上がりは充実している。微妙な題材をココまで赤裸々に映像化し一つの制作物として見ごたえある作りに仕立てたという意味ではいい仕事っぷり

 メッセージ性云々で言えば、説明的ナレーションを無くし、音楽のみで淡々とみせる部分を多用することで逆にメッセージ性が色濃い作りになってるパラドックス
 10年にわたり終戦記念日8月15日の靖国神社を取材。靖国神社に集う熱狂のドキュメントと、靖国神社のご神体「靖国刀」の鋳造をしていたという老刀匠へのインタビュ&鋳造シーンを織りなして構成。特に靖国神社の熱狂は、軍服正装で整列行進の人々や英霊を奉る集会の様子などと共にそれに反対する側との衝突がごく至近距離で捕らえれる迫力のカメラ。
 祀られている魂を故郷に返したいと何年も靖国に通う台湾原住民の女性の悲痛な物言いが胸を打つ。
 助監督に『ヨコハマメリー』の監督、中村高寛氏がクレジットされる

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2008年04月18日

企業訴訟の闇を描いて

フィクサー
トニー・ギルロイ
08.0417Michael.jpg★★★☆☆

 大手企業の訴訟の裏で動く人々の闇の世界を描いた人間ドラマ。取っ付き、分かりやすさに欠けるが、徐々に内容が明らかになり、ラストは丸っきり腑に落ちる終幕である。観後感はまれにみる爽快さ。印象の充実度は同時期に観た『クローバーフィールド』が思いきりチャチに思えるほど。いぶし銀の味である。悪くない

 監督のトニー・ギルロイはこれまで脚本家としてメジャーでの実績を持ち今作が初監督と。長年温めてた脚本を監督&プロデューサーのS・ソーダバーグを通しジョージ・クルーニーに持ち込んで、氏の主演と製作者としての今作への関わりを取り付けたと。ソーダバーグは同志クルーニーと共に今作の製作総指揮として名を連ねる

 とある大手アグリ企業への民間の薬害訴訟に絡み、企業側法務担当者と被告企業の弁護を担う法律事務所側担当者の対決がまずは主線。担当弁護士は企業の真実を知る中で良心の呵責からか原告側へ加担する「奇行」に走り始めたことからこの図式となる。いわばこれは法律事務所側の不祥事なわけで、これに対し事務所幹部は所内の汚れ担当=もみ消し屋(フィクサー)、マイケル・クレイトンに奇行の阻止を厳命。

 原題にとられた『マイケル・クレイトン』はフィクサー役で主演ジョージ・クルーニーの役名。クレイトンは同僚であり友人でもある奇行の弁護士アーサーをいさめにかかるが、やがてアーサーは自殺。クレイトンはアーサーの死の直前に彼に会っており、原告側への支援に意欲を燃やしていたアーサーの自死が解せない。真相を追及するうち自分の身にも魔の手が降りかかることに

 企業側法務担当にカレン役にティルダ・スウィントンで、アカデミー賞で7部門ノミネートされた今作において唯一受賞の助演女優賞に栄に輝いてる。作中、このやり手女史の生態、重要な会議の直前の出勤の間際にプレゼン内容の復唱を繰り返す様子が描かれている。気弱な本性を厳かな所作でキャリア服に身を包み、理論武装するなど「変身」の過程を見せることでこの人物の素顔を浮かび上がらせている。ある種悪役のスタンダードな見せ方でもあり、ここいらがラストシーンのサプライズに布石として効いている
 クルーニーはどこか厭世観ただようニヒルな役柄でいつもながらの安定感みせる

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2008年04月16日

都市破壊パニックムービーの傍系

クローバーフィールド
マット・リーブス
08.0415CloverField.jpg★★★☆☆

 全編手持ちカメラでぶれる視点の面白さ。素人が持つハンディカメラでたまたま出くわした大惨事を記録したという設定。
 ゴジラみたいな巨大なクリーチャーがニューヨークを破壊、それらが人に襲いかかってくる手合の、ある種スタンダードなSF映画なのだが、全体を貫く視点(カメラ)に趣向を凝らし、独自のスタイルを作り上げることに成功している。素人ライクなハンディカメラで見せる映画に『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』があったが、予算のスケールが違う。都市破壊、街中での軍隊による戦闘シーンなど特撮含みそれなりど派手なシーン盛り込まれて見せ方も緻密。メジャーレベルのクオリティは優にクリアしてる。それでもこのレベルにしては製作費としては相当低予算だったらしいが。

 素人カメラを装うことで何が起こっているかをはっきり見せない。映画の中ではそのクリーチャーの形が徐々にわかっていくのだが、この何かわからないまでの観客の飢餓的感覚をうまく利用してる。これは内容を全く明らかにさせないことで期待感をあおる映画宣伝の手法にも貫かれたやり方。
 結果映画が面白ければいいわけだが、まあ、クリーチャーの形が見えてしまえば‥最後にははっきり姿を映し出してる‥なんてことはない。ゴジラとエイリアンを足して二で割って、素人カメラ風に見せることで低予算のごまかしを効かせたような図式
 プロデューサーは『M:i:III』を監督、ドラマ『LOST』を手がけたJ・J・エイブラムス

 政府が記録として収めたビデオを再生していると字幕。
 とある男が映しているハンディカム。ニューヨーク、セントラルパークを見渡すアパートで恋人とじゃれ合う様子、メトロに乗ってどこかへ出かける様子。突然カメラはとあるパーティの様子に切り替わる。元々収録したテープに上書きしているのだと後々わかる。パーティで盛り上がる中、突然停電が起こり街に爆音と火花が飛び交う状況。自由の女神の頭の部分が道に転がり、倒壊したビルによる爆風が街を覆い尽くす。どうやら巨大な化け物が街を破壊している様子。カメラをもつ男周辺の友人らが逃げ惑う姿、そしてその中の一人の友人を救いに危険地帯に乗り込むことになり決死の救出劇となる

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2008年03月28日

冷酷な殺し屋をめぐるストーリー

ノーカントリー
コーエン兄弟
No Country for Old Men Ethan Coen&Joel CoenGeyrhalter
07US
08.0327NoCountry.jpg★★★☆☆

 アカデミー賞4冠で話題の『ノーカントリー』。
 久々に封切りモノを観る。映画館で映画観たのは2ヶ月ぶり、『いのちの食べ方』という食物加工の現場を追ったドキュメンタリーで、奇しくもこの2つの映画が一つのアイテムの元につながってしまった。家畜用のエアガンがそれ。食肉加工現場ではこれを使い機械的に牛の脳天にボルトを打ち込み屠殺していたが、それを『ノーカントリー』の殺人鬼シガーは持ち歩いて殺しの道具としている。エアガンを持ったもう片方の手にはボンベを携える図の奇妙さ。おかっぱ頭の異様さも相まってそこはかとない恐怖感をにじませる。これまでみたことのない種のキャラクター。この映画の象徴的ビジュアル。怖くもあるがどこか脱力の風合いもないではない。
 音楽も聞こえず出演者の言葉も少ない寡黙な映画だが、語られているものは多いと感じる。この映画を最優秀作品賞とした米アカデミーは極めて正常に評価機能が働いているとみていいのでは。映画の無限の可能性を感じる種の秀作である。説明的でなく表に出さずに込められていることの多い深遠なスタイル。

 映画ではたまたまそこにあった大金を拾ってしまったことで前述の殺人鬼シガーに追われる男、モスがいて、ひたすら逃げつ追われつを展開する。モスには若き妻がいてその妻にも累が及ぼうともしていて過剰なストレスがのしかかるが、そこはベトナムから帰還兵としてのタフネスがそれを跳ね返す

 そしてこれにからむ老保安官。これは日本では「BOSS」のCMで露出の多いトミー・リー・ジョーンズが演じてる。枯れた芝居がいい。原題の『No Country for Old Men』はこの保安官べルのつぶやき「老いたものの住む国ではない」との嘆きから取られていると。80年代アメリカ南部、不可解な殺人、事件が相次ぎ老保安官はついていけないと嘆きつつ犯人は追わなければならない。殺人鬼シガーはモスを追う過程で無数の巻沿い殺人を繰り返しているからだ。かくして保安官べルはシガーをおいつめられるか。そしてモスとその妻の運命やいかに

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2008年01月10日

美的カメラで見知らぬ現実を切り取って

いのちの食べ方
ニコラウス・ゲイハルター
08.0109inochi.jpg
★★★☆☆

 食肉、野菜など様々な生鮮食料品の製品化工程を追ったドキュメンタリー。ベルトコンベアで大量に運ばれるヒヨコや親鳥、生きた牛や豚、鳥が機械的に食肉として殺され内臓を取りだし肉塊になり加工されるシーンや牛の横っ腹から手を突っ込み子牛を引きだす場面もある。ふだん余り見る事の出来ない風景である。不思議とグロテスクさを感じない。ひたすら大規模で無機質な食糧加工過程をたんたんと羅列してる

 まあ、普通のこの手のドキュメンタリーであれば、カメラが寄れるだけ寄って現実を熱く切り取るみたいな暑苦しいまでの熱がこもるものだが、今作の視点は極めてクールで一つのアートフィルムを観ているかの様な、スタイリッシュな方向の「作家性」を感じる仕上がりになっている。
 基本1シーン1カット固定カメラで長回し、アングルはシンメトリーが基調。BGMなし現場音のみ、ナレーション無し。現場従業員同士の話し声入れ込み。見ていて腹に力が入るよな食肉加工の場面に写っていた作業員が次のシーンで昼食タイムなのかサンドイッチをぱくついてる状況となる。とてもシュール、というか象徴的で印象的な編集である。
 スタイリッシュな画面により映されてる中身がオブラートに包まれているのだが、食糧という有機物を扱うに、機械工場のような余りに無機質な状況で取り扱われている実際の現場。同じ規格のモノを大量生産する、という意味では効率を追求する上で自然、機械工場のようになるしかない、という現実をつぶさに認識でき、そして考えさせられる。食べることは「命」を食べていることなのだと。

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2007年11月08日

トレーシー役が光る映画版ヘアスプレー

ヘアスプレー
アダム・シャンクマン
07.1107Hairspray.jpg★★★☆☆

 舞台は人種差別が残る60年代USボルチモア。おデブの女子高生ヒロインのトレーシーが持ち前の明るさとダンスにより旧弊を打ち破り、一躍スターダムにのし上がるサクセスストーリー。88年のカルト映画の奇才ジョン・ウォーターズよる映画がオリジナル版、02年にブロードウェイミュージカルとなり大ヒット。さらにそのミュージカル版を元に再映画化されたのが今作。
 トレーシー役には無名の新人、ニッキー・ブロンスキーが抜擢。愛らしくホットな彼女のキャラが今作の成功に最大に寄与しているであろうと思しき存在感を存分に発揮してる。
 スペシャルキャスティングとして、トレーシーをさらにタテヨコに倍化したよな巨漢のトレーシーの母役にジョン・トラヴォルタが女装&特殊メイクで参加、さらに父役でクリストファー・ウォーケンが出ているが、彼らはあまりしっくりきてない、というか彼らである必然性が希薄。単に客寄せの存在に思えるが、それだけヒロインが良かったということか。

 ミュージカル版はこの夏に東京公演があって観てたが、映画ではかなりプロットをスリム化してラストの成り行きを改変しシンプルな印象。1曲1曲を存分に聞かせる舞台構成に近い演出は、振付け師出身という監督ならではの趣向か、良い味。

 それと、ジョン・ウォーターズがカメオ出演しているの後で知った。冒頭に出てくる露出狂だと

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2007年11月05日

松尾スズキの緻密な精神病院系シネマ

クワイエットルームにようこそ
松尾スズキ
07.1104quietroom.jpg★★★☆☆

 映画監督としての松尾スズキ、長編2作めで自身原作の同名小説の映画化。
 フリーライター、明日香の奇妙な女子閉鎖病棟(精神病院)体験とそこに至る彼女のいきさつを面白おかしくもサスペンシーにつづったモンド映画。松尾スズキということでナンセンスギャグ、オンパレのコメディかと思いきや、ヒロインの回想や同棲相手の放送作家・鉄雄の証言により時間軸を縦横に行き交い徐々にネタ明かししていく緻密に構成されたプロットで、笑いというよりはおおよそシリアスなサスペンスチックテイスト。

 精神病院ものといえば、真っ先に『カッコーの巣の上で』を思いつくが、日常ではありえない強烈キャラを次々送り出すには「カッコー」の舞台設定で過食や拒食や異常行動に取り囲まれることになる今作のヒロイン。
 元はといえば駆け出しのフリーライターとして仕事が山積、締め切りに追われ自制がきかない異常心理が発端。病棟の面々と対峙することに最初こそ恐れをなしたが、次第に馴染んで、彼女ら並に、否、彼女ら以上にディープなキャラを発散させる。そして最後は自己解放のハッピーエンド。

 ある日気がついたら精神病院の一室、クワイエットルームと呼ばれる保護室に5点拘束されてたヒロイン。なぜここでこうしているかがわからない。覚えているのは夢で見たゲロでウガイしてた自分。ナースは自殺未遂により拘束というが、身に覚えが無い。面会に来た同棲相手に聞いてもどうも歯切れが悪い。が、徐々に事態は明らかになり、平行して病院の面々とも奇妙な関係が築かれていくことに‥

 主演の明日香に内田有紀で久々表舞台復帰も以前と代わらぬ輝きある存在感。同性相手、鉄雄には宮藤官九郎でキレキャラを相変わらず器用にこなす。患者役で蒼井優、大竹しのぶ、馬渕英俚可らが怪しくからむ

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2007年11月01日

ピアフの奇跡的伝記映画

エディット・ピアフ〜愛の讃歌
オリヴィエ・ダアン
07.1031edit.jpg★★★☆☆

 ピアフの生涯に真っ正面に取り組んだポジティブで意欲的な今作。2時間を軽く超える尺の中で、一通りを網羅していて、印象としてはまあまあ、だった。あれ以上どうにかするならどこかに偏らせなければならない。それはそれで旧来のファンからはひんしゅくを買うだろう。そういう意味でまあまあ。それでもピアフの歌にどっぷりつかれる2時間ということで価値ある映画体験。実の所、全編でまるっきり涙出っ放しの状態

 天性のウタゴエの元にストリートで歌う少女から一気にスターダムに上り、最愛の恋人との悲劇の分れ、度重なる交通事故(映画では1度のみ)、薬物中毒を経て、47歳ながら老婆の風体で最後のステージを迎える、などと、悲しみと歓喜に満ちた波乱万丈の人生をつづる。
 伝説のシャンソンクイーン、"エディット・ピアフ"の生涯を網羅した伝記映画。作りとしては、晩年と少女期だったりが交錯するなど時系列が入り交じる展開ながら、ほぼ直球勝負の本格派スタイル。こうなると、誰がピアフを演じるか、にかかってくるのだが、少女期以外、20代前後から晩年47歳までのピアフ役を、フランス女優で『ロング・エンゲージメント』他に出演の"マリオン・コティヤール"が演じた。しゃがれ声で涙もろく、周囲を自分のペースに巻き込む強烈な個性の持ち主としての役作りは軽くこなしきれて、さらに永遠少女のようなかわいらしさが満ちあふれて好感持てる。これはマリオン本人の魅力によるものだろう。まあ、顔が似てないのは仕方ないが、十分、ピアフの吹き替えとして耐えられる。

 撮影監督にフランス在住の永田鉄男氏が参加してる。見せ場としては何といっても、映画の中盤、最愛の恋人、マルセルの死に直面する際の1シーン1カット。史上の名場面となるカメラワーク

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2007年09月27日

銃撃マニアックな抗テロ捜査模様

キングダム 見えざる敵
ピーター・バーグ
07.0926The-Kingdom.jpg★★☆☆☆

 10/13公開される新作、試写会にて観劇
 自爆テロに銃撃戦など、マニアックなまでのど迫力な爆破シーンや戦闘シーンがウリであろう映画
 
 サウジアラビアの首都都リヤドにて、テロ組織の巣窟に挑む4人FBIの捜査官と1人のサウジの警察官。
 冒頭にて、リヤドの米国人居留地が自爆テロに襲われ数百人の犠牲者が出る爆破シーン。これにFBIの捜査官も交じっておりその知人の捜査官らが当局の制止を振り切り現地捜査に乗り出す。FBI側のリーダーは『Ray/レイ』のジェイミー・フォックスが演じる
 周りは全てアラブ人。サウジの軍やら警察らが警護に当たってるとはいえ、周りの誰がテロ犯だかわからない完全アゥエイの絶体絶命的状態。捜査の術を知らないサウジ警察を先導する形で犯人解明に迫るも、確信に近づけば近づくほど危険度アップで、4人+1人の5人の中で誰かはやられるであろう、と予想できる展開。中途から徐々に緊張感あおられストーリー展開に吸引力あり。その後はまあ銃撃戦も含め、ある程度想定される流れとなりやや興ざめ。

 ベタながら、硬派でドキュメンタリスティックな抗テロ戦時アクションドラマ。
 扱われてる題材は今なお中東を主として世界のどこかで進行している現実で、普遍的な人種間闘争、宗教間闘争の最前線をうたったものでもあるだろう。これがある意味ショーアップした形で見せ物にされ、それを見ている自分もなんだが複雑な心境に追い込まれる。

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2007年09月20日

エンタメなパワードキュメンタリー

シッコ
マイケル・ ムーア
07.0919sicko.jpg★★★★☆

 US社会派ドキュメンタリーの超人、マイケル・ムーアの新作。今回はUSの医療保険問題に深くメスを入れた。
 国による健康保険制度のないアメリカで、庶民がケガや病気になった場合の恐ろしい現実を実例を列挙してまざまざと見せつけていくが、テイストはとてもポップでわかりやすい。レトロ映像を戯画風にアレンジして折り込んでおり、とてもこなれたドキュメンタリーになってる。演出の度合いがもはやドキュメンタリーを超えている。ある意味ジェットコースタームービーのようなリズム感と吸引力は、これまで彼が世に放ち話題をさらった『ボウリング・フォー・コロンバイン』、『華氏911』をさらにパワーアップしたもので、見せ方のスタイルが進化してる。深刻な現実(リアルストーリー)を笑かして、泣かして、観客に充分な揺さぶりをかけながら訴える仕掛け。内容の真偽はともかく、まずそこらへんに感動した

 国民皆保険制度がないことで民間の高額な医療保険に加入していなければならなく、無保険者が5000万人にも上るアメリカ。また、保険に加入していても、偏向した審査の元で保険金の下りない例も多数あり、うかつに病気になれない現実。
 膝をケガして裂けた傷を自ら黒糸で縫う青年が冒頭で出てくる。治療費が高く医者にかかれない。そして木材作業中、中指と薬指を切り落としたおじさん。医者にかかるとくっつけるのに中指で720万、薬指で150万円といわれ「ロマンチックな彼は」「セールス価格である」薬指の方を選んだという笑えない現実を話をショーアップして並べる。次から次へとリアルストーリーが並べられ、これら問題の因果となる政府、保険会社、医薬品メーカーぐるみでの利権のしくみをあばき、後半からは国民皆保険制度のあるカナダ、フランス、イギリス、そして(仮想敵国)キューバでの、アメリカの実態から見れば夢のような現実を伝える。保険制度で守られた市民らに病院にかかった時の自己負担は無料であったり、あっても少額だと

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2007年09月14日

『カサブランカ』オマージュの趣味的映画

さらば、ベルリン
スティーブン・ソダーバーグ
07.0913thegoodgerman.jpg★★☆☆☆

  9/22公開される新作、試写会にて観劇
 ソダーバーグ監督の映画オタクぶりいかんなく発揮のモンドシネマ。映画のルックスに話の展開含め世界観はまるのままオールドシネマ『カサブランカ』で、古き良きフィルムノワールを今ある技術フル活用で再現し尽くしたよな、映画の制作過程で監督やらスタッフからもれるほくそ笑みが想像できる「オマージュ」ぶり。
 そんなルックにまずは目が行ってしまう。内容は少し複雑だったのだが、設定は何でも良かったのかもしれない。過去がある男女。2人は思わぬ再会を果たすも時代は戦争で不安定な情勢。甘き思い出を胸に秘めつつ、男は女の海外逃亡に手を貸す‥なんていう『カサブランカ』的なものにはまればいいと、ジョゼフ・キャノンの同名小説が今作の原作に採用されたか。何しろ昔映画を「オマージュ」することが目的なのだろうから

 舞台は世界大戦後のベルリン。映画の冒頭、戦中・戦後の様子。全てモノクロで画質がオールドフィルムそのもの。当時の記録映像も多少は混じっているだろうとも目されるが、それにトーン合わせて、フィルムノイズに、微妙なコマ飛び具合に、画面のにじみ等再現。冒頭のイントロダクションではそんな映像ががっつり連なる異様な幕開け。ストーリー始まって、そんなフィルムトーン再現は多少は落ち着くものの、今度は構図の切り方、カット割り的な部分が、それ風な作り。ヒロイン役、ケイト・ブランシェットもディートリヒかローレン・バコールと見まごうファムファタールな見栄え。迎え撃つジョージ・クルーニーはさながらボギーな役割なのだが、これは余り見た目として似ていない。が、それなりにタフな男ぶりである。

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2007年09月03日

南の島でたそがれる種の映画

めがね
荻上直子
07.0902megane.jpg★★★☆☆

 9/22公開される新作、試写会にて観劇
 昨年公開の『かもめ食堂』と監督と主要キャストが同じで、今作はそれに続くスローライフ企画第2弾的味わいののんびりスタイル。

 (たぶん)都会に働くひとりの女性が味わう島の宿での不思議な空気。『かもめ』では受け入れる側だった小林聡美の役柄は来訪者に変わり、宿に集まる人々の異色性に最初こそ拒絶反応を起こして馴染めない。島での長期滞在に備え、沢山の本をアタッシュケースに備えて休んでやるぞ!とばかりの勢いみたいなものが全て空回りしてしまったことでのやりきれなさか。宿の主人に観光スポットを聞けば何もないと答えられ、「たそがれる」以外にこの宿で過ごす目的などない、とやり過ごされ、おまけに朝は浜辺でこれまた不思議な体操をみんながしてるとなれば、違和感ぬぐえず、早々に宿を変えようと腰を上げるも、移った先はその真逆の慌ただしく農園ライフを迫る宿。一泊もすることなく、元の宿へ。何か吹っ切れた彼女はその後宿のペースに馴染み始めていく
 
 同じような世界観ということでどうしても前作と比べてしまうが、スローさ加減で今作が上を行くが映画の充実度としては前作に足らない印象。どうせなら、かもめ第2弾を見たかったとも‥
 旅人タエコ、宿の主人(光石研)や浜のカキ氷おばさん(もたいまさこ)の主要3人の素性が結局わからず仕舞いのミステリアスな香りがいいスパイス。唯一素性が明かされ気味の高校教師ハルカ役の市川実日子は小林聡美&もたいまさこグループに加わることで日テレでやってたドラマ『すいか』を思い出させてくれて懐かしい。タエコを追ってきたという青年役の加瀬亮の存在がいまいち要らないような気もするが、まあバランスと考えてのことか

 タエコ「融和」後の中盤からの展開はスロー度がさらにアップするもんで、体が緩んで睡魔が襲ってくるのがたまに傷。それはそれで心地よき睡魔。何かツボを押されてるよなヒーリングシネマ

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2007年09月01日

NYを舞台に愛の形の群像劇

ショートバス
ジョン・キャメロン・ミッチェル
07.0831Shortbus.jpg★★☆☆☆


 9.11の傷跡残したNY(ニューヨーク)を舞台に、それぞれの生活の中でセックスに対する悩みもつ個人、そしてゲイのカップルが、やがて一所(ショートバス)に集い互いに融合しあって、解決を得ていく方向性。

 過激ながらなぜか笑ってしまうような様々なセックスシーン、(それも全てがフルコンタクト?)が映画の冒頭から描かれてて、それなりに異色度高しのモンド映画。
 中でも多く登場するボーイズカップルは片割れがひどく内向きな孤独を抱えていることで、彼の繊細な性向が随所に描かれ映画全体がナイーブな色味を帯びているよう。そこいらのせいか観ている途中でだんだんときつくなってくる感触はあるのだが、のぞき感覚的怖いものみたさ的わくわく感は多少なりとも全体を貫いてる。ゲイの3Pなんて普通観る機会がない
 あと、主演クラスでいえば、もろにオリエンタル顔の中華系カナダ人というソフィアはエクスタシー未経験のカウンセラーという微妙な役どころ。先のボーイズカップルに誘われ、足を踏み入れるのは秘密のサロン「ショートバス」で、観客はこのソフィアの目線と一体になって、サロンで繰り広げられてるめくるめく愛の行状を観察することに。

 監督は前作『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』でゲイの生き様を鮮烈に描き切ったジョン・キャメロン・ミッチェル。前作の世界観を今作ではさらに深く切り込み間口を広げ、前作とはうって変わって繊細なタッチで描いた感傷系。

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2007年08月27日

リュック・ベッソンの少年の夢世界

アーサーとミニモイの不思議な国
リュック・ベッソン
07.0826arthur-movie.jpg★★☆☆☆

 9/22公開される新作、試写会にて観劇
 実写とCGアニメ融合のファンタジー活劇。少年がミクロの世界に入り込み、その世界の姫とともに宝探しの旅に挑む話。宝を探し当てることで家の窮地を救う流れだが、なんとも子供向けチックで話の展開としてベタ過ぎる内容。あまりにも都合よく、分かりやい内容の万人受け狙いが見て取れる今作は、そこそこヒットするのだろうきっと
 個人的にすっきりこなかったのは、アニメ系映画で最近観た『レミーのおいしいレストラン』との比較をしてしまったからなのだが、まあ、毛色が違うものとは言え明らかに話のひねり度合いに差がある

 実写人物はミクロの世界に入るとともにCGキャラクターにさし変わるのだが、キャラクターの見栄えが、なんとも日本製プレステあたりのゲームに出てきそうな、10年経てば、明らかに古さがにじみ出るよな動きにムラのある現在進行形的CG技術の作りだもんで気にかかる

 監督、リュック・ベッソンはとある原案からこれをまず小説化し(自国フランスで100万部以上のセールス記録だと)長年の構想の元に映画化したと。それにしても"スターウォーズ"やらなにやら過去のこの手の活劇もののあらゆる「感化」がみられるのだが、まずは少年アーサー役、フレディ・ハイモアが主演でヒットした『チャーリーとチョコレート工場』との関連性。本人の出演とともに今作のCGキャラクター全体が『チャーリー‥』のウンパ・ルンパのキモキャラ路線につながる。あと少年の使いがスピルバーグ映画に多く見られる少年主演モノのそれにかぶる。

 祖母と2人暮らしの少年がかねて失踪してた祖父が庭に残したという宝を探しにミニモイ族が住むミクロの世界の冒険に旅立つもの。家の抵当権が他人に移る期限が迫る中で少年は宝物を探し出さなければならないが、そのためにミニモイ族を滅ぼそうとたくらむ暗黒勢力に立ち向わなければならないことに‥

 ラストの展開が最初から想像できるとはいえ、観終わり感はまあまあすっきり
 あと、祖母役でミア・ファローが出演。映画の冒頭から出ずっぱりのイメージ

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2007年08月09日

天然少女の心の移ろいを刻印

天然コケッコー
山下敦弘
07.0808tenkoke.jpg★★★☆☆

 田舎の分校に通う少女と東京からやってきた転校生の淡い恋物語が主線。テイストはゆるめで淡い質感。ストーリーが何ごとかに突き進んでく強さなく、脱力感覚のエピソードが連続されるオムニバス的な流れ

 どこかで体験したよなシネ空間。丁度『バーバー吉野』やら『かもめ食堂』に体感温度近い。両方とも荻上直子監督によるものだが。繊細かつ脱力のどこか女性監督が描いたような優しさにあふれた作品に仕上がってる。胸にちくちく来るよな酸っぱさ満点
 実際には『リンダリンダリンダ』『松ヶ根乱射事件』の山下敦弘監督の手によるものだが、意外な新しい芸風を見せつけてくれたという感触。まあ、脚本(渡辺あや)の力のよるものも大きいだろうし、同名の原作の世界観に全てオーサライズされてる、ということかもしれない

 ヒロインの右田そよにリハウスガールの夏帆で、この繊細な物語を象徴するかの天然さ発揮。透明感というよりは親近感ある自然な演技。あとはそよの両親役に佐藤浩市、夏川結衣と豪華なキャスト。特に佐藤浩市はリアル感あるが、山下監督の前作『松ヶ根乱射事件』に同じく父親役で出てた三浦友和の芸風に近似してる。

 なにげにこの手の映画は最近よくある傾向なのかもだが、個人的には大好きな世界観だし癒されることこの上ない

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2007年08月07日

ベトナム少数民族、息づく人々を焼き付けた秀作

モン族の少女 パオの物語
ゴー・クァン・ハーイ
07.0806Pao.jpg★★★☆☆

 ベトナムの山岳民族、モン族の少女の数奇な運命をめぐるストーリー。

 自然豊かなベトナム北部を舞台に生母と養母2人の母親をめぐり思い悩む少女の痛みをベースに、少女の恋物語がからみ叙情的に描かれた牧歌的人情ドラマ。タッチ(演出)はおおよそ20年かそこら前の中国映画をほうふつとさせる昔スタイル。なのだが、多様な民族衣裳に包まれた人々が大挙して市場に参集してるモブシーンは、ほぼエキストラを仕込んでいるようには見えず、生味の人々が画面に息づいていて、そんなところに興味魅かれた。
 ヒロインの少女、パオが買い物にやって来る市場。そこでは運命の人、チューとの出会いがあり、さらにチューと懇意になって2人でお祭りに出かけるとなるとそこにも現地に息づく人々がいる。ベトナム北部の生活が間近に見えてくるようでほほえまし。

 監督はベトナム人のゴー・クァン・ハーイで、ベトナム映画といえば真っ先に思い出すトラン・アン・ユン監督の作品には俳優としての出演歴があり、演出的なことも同監督に学んだという。さらにヒロイン、パオ役のドー・ティ・ハーイ・イエンとは私的なパートナーでもあると。

〔STORY〕
 育ての母・キアと父、弟。家族と幸せに暮らしている少女パオ。ある日市場から帰ってくると母がいなくなっており村中の人たちにより大捜索されるも見つからず、母の葬儀となり悲しみくれるパオ。父が徐々に弱っていき、無意識に名を呼び父が求めるパオの生みの母であるシムを探しに、パオは旅に出る。そこからパオの長い追想‥

 パオの生前。キアと父には子が恵まれず、ある日父はシムを連れ来て(一夫多妻制が残る風土)女児をさずかりこれがパオとなるが、シムはパオを生んですぐに家を空ける。後年シムは再び戻って弟を産むがまた出ていってしまう。子らは家に居着かないシムを母親とは認めずたまに顔を出しても冷たくあしらうことに。
 パオは成長し市場で笛吹き青年チューと出会い交際が始まる。2人で祭りに出かけた際、一番の信頼を置く養母キアがほかの男性といるのを目撃しぼう然となるパオ。しかもその男性はチューの父親であることも発覚し二重に打ち砕かれたパオ

 時系列が追いつき生母シムを探す旅路。長距離バスを乗り継ぎなんとかシムと会えるも、そこでシムは家庭を築いていて戻ることは出来ないという。失意にかられ帰路。パオはそこで思いも寄らぬ光景を目にすることに

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2007年08月03日

グルマンねずみのアクションコメディ

レミーのおいしいレストラン
ブラッド・バード
07.0802remy.jpg★★★★☆

 不世出の味覚を持ったねずみのレミーが調理士見習いのリングイニと出会いレストランで繰り広げるサクセスストーリー。すごいCGやな、と思いきや意外な感動ストーリーに引き込まれ涙することとなった。USメジャーお約束のハッピーエンドととなるもアニメ映画としてまるきり侮れない秀作。ピクサースタジオのアニメは初めて見たのだが最高のエンターテイメント作り上げてる

 実写と見まごうCGアニメ技術の最前線が見られるが、まずはねずみ視線でのド迫力映像に驚く。下水道の水流に巻き込まれる主観映像の迫力はヘタなジェットコースターより臨場感ある。ねずみの毛のふさふさとした質感は超リアル。中途からレストランが主舞台となり料理のリアルさはもちろん人物キャラの表情の豊かさは、デフォルメしているにも限らず、生の感情が伝わる。実物の役者で一度芝居したものをキャプチャして作ったのだろうか。すごいリアルさ。そして背景となる美術は屋内外限らず実写に近しい。ここまで進歩しているのだなアニメーションは。リアルさで言えば日本は完全に後れを取ってしまってる、のだろうか‥。
 技術的に新しく見える、ということは何年か後に古くさく見えることになるだろうかと心配に思える位のテクノロジー

 とある郊外の一軒家の屋根裏に一族と暮らすねずみのレミー。類いまれな臭覚の持ち主ゆえ毒味係をさせられてるが、普段から今はなき天才シェフ、グストーの料理書を愛読し夢心地。そんな折り家の老主人の攻撃を食らった(なぜか銃撃)一族は大移動となるも、群れからはぐれたレミーは偶然にも崇拝するグストーが生前に営んでたレストランにたどり着く。そこで雑用係として働くリングイニが作った出来損ないのスープにちょいと手を加えただけで客の好評を得たことから、リングイニと意気投合したレミー。2人の夢への挑戦が始まるのだが、当然ながらレストランにいてはならぬねずみゆえに前途多難。レミーはリングイニの料理帽の中に隠れ髪を引っ張ることでリングイニを操って料理する技を習得。2人の料理はたちまち町中の評判をとり店は大盛況。そこに目をつけたのは料理界の権威であり辛口評論家のイーゴで彼の審判が下されることになるが‥

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